私の家の、広間と仏間の間の垂れ壁には、一枚板を彫刻した欄間がはまっている。
けっして、それは骨董の価値があるわけでもなく、また特別立派で高価なものではない。
しかし、一枚板を手仕事で彫刻したものに変わりはなく、この家の中で少ない意匠の一つとなっている。
ふすまを閉めた状態で、仏壇に手を合わせていると、その欄間から、やわらかい光が仏間の棹縁天井に当たっているのを感じるのである。
そして、その光が差す欄間の方を向くと、欄間に描かれた世界が、なんとも神秘的に見えるのである。
私の家のその欄間は松竹梅の絵が彫ってあるのだが、欄間には様々な形態や種類、絵がある。
もともと、採光や換気などの目的で、部屋と部屋、部屋と縁側、縁側と外部との連続性を持たせる為の装置だったのだが、この欄間の意匠がとても日本的な感覚なものが多く、私は好きである。
昔の人は何を想い、何をその限られた空間で表現しようとしたのだろうか?
無骨な感じで彫られている我が家の欄間も、光に包まれると、その欄間の世界がまるで桃源郷のように思えたりするのである。